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榎戸輝揚氏の授賞対象となった研究業績の紹介は 宇宙科学奨励賞について | 宇宙科学振興会

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Academic year: 2018

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授賞者の研究業績の紹介

2017年度

第10回宇宙科学奨励賞授賞者

宇宙理学分野

榎戸輝揚(えのと てるあき)

京都大学白眉センター・特定准教授

業績の題目:超強磁場中性子星マグネターに関する研究:観測上の多様な振 舞いの統一理解と将来観測実験の推進

マグネターは超強磁場(表面磁場強度 10

10-1011

テスラ )を もつ 特 異な 中性 子星 で、 磁気 エネ ルギ ーを 解 放す るこ とで X線 や ガン マ線を放射しているらしいことがよう やく明らかになってき た天体である。ただし、マグネターが持つ臨界磁場(4.4×10

9

テ スラ)を超える超強磁場のもとでは、「光子の自然分裂」や「真空の複屈折」、「光子の散乱 断面積の磁場方向依存性」など、特異な現象が起きると理論的に予想されている。そ の よ う な 特 異 な 物 理 素過程をふまえて、どのように磁場エネルギーが放射に変換され るのかという放射機構については、全くと言って良いほど分かっていない。榎 戸氏 は、 この よう なマ グネ タ ーの 観測 的理 解に大きな貢献をしてきた。

軟X線でマグネターを観測すると、中性子星表面からの熱的放射が観測され、2温 度 の黒体 放射の重 ね合わ せで非 常に良く 説明で きる。一 方、硬 X線で は、磁 気圏か らと考えられるベキ関数的な放射成分が卓越することが、2000年代中頃にインテグラ ル 衛星に よる定 常的なマ グネタ ーの観 測からわ かって きた。 しかし、 マグ ネターの 多くは通常暗くまれに突発的増光を示すトランジェント天体であり、ベキ関数的な硬 X 線放 射が マグ ネター 一般 の性 質か どうか はわ から なか った。 榎戸 氏は「すざく」 衛星を用いて突発増光したトランジェント型のマグネターを複数観測し、硬X線放射が 明確に存在することを発見した。これにより、硬X線放射がマグネターに普遍的に存在 することがほぼ確実になり、その後に続く同種の観測の嚆矢となった。

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子分 裂が ベキ 成分 の 系統 的変 化を 引き 起 こし てい る可 能性 が 指摘 され るな ど、マグ ネタ ー放 射機 構の 理 論的 研究にもインパクトを与えている。

榎戸氏は上記のような観測的研究に従事するだけではなく、さらに新たな観測手 段 でマ グネ ター の研 究 を押 し進 める ため 、 将来 ミッ ショ ンの 推 進に も寄 与している。 米国で検討が進められたX線偏光観測衛星 GEMS、PRAXyS の主要メンバの一人として、X 線偏光計の開発を進めた(論文3)。マグネターを含めて、磁場の強い中性子星ではX線 放射が強く偏光していることが期待され、放射 領 域 のgeometry を類推する重要な手掛か りになると考えられるからである。残念ながら、GEMS, PRAXyS は採択されず、計画は中断さ れた。それと前後して、核物質の状態方程式の決定を目指す NICER(2017 年 7 月に ISS に設置 された)のメンバとして、X線集光計の開発に参画した。NICER は、NASA ゴダード宇宙 飛行センターが主導する計画で、中性子星の質量と半径を精密に測定することで、 核物 質の 状態 方程 式( すな わち 超高 密度 で の物 質の 性質 )を 明ら かに しよ うとする 計画である。榎戸氏は中途からの参画にもかかわらず、マグネターに関する優れた成 果と卓越した実験技術により、NICER 主要メンバの一人となった。特に、56 台搭載され たX線集光計の製作と地上較正、相対アラインメント等に貢献した。さらに、打ち上げ 前からは、NICER のマグネターグループのリーダーとして観測計画の立案や運用を行 なっている。現在は、NICER の初期観測データの解析で貢献している。

榎戸氏は 34 歳という若さにもかかわらず、共著を含めて 80 編以上の査読論文を出版し、 国際会議での invited talk が 12 回、競争的資金の獲得も多く、受賞 歴も 多い。これ ら の成 果が 評価 され た こと もあ って、すで に 特定 准教 授と なっ て いる。榎戸 氏は、マ グネ ター の観 測的 研 究お よび マグ ネター観測に向けた将来衛星の開発において顕著 な成果を上げていることはもちろんであるが、学術研究全般にわたる将来性にも期 待するところは大きい。

以上のように榎戸氏は宇宙科学の進展に寄与する優れた研究成果をあげており、氏 に宇宙科学奨励賞を授与することとなった。

関連する論文リスト

1.T. Enoto, S. Shibata, T. Kitaguchi, Y. Suwa, T. Uchide, H. Nishioka,

S. Kisaka, T. Nakano, H. Murakami, K. Makishima,

“Magnetar Broadband X-Ray Spectra Correlated with Magnetic Fields: Suzaku Archive of SGRs and AXPs Combined with NuSTAR, Swift, and RXTE”, The Astrophysical Journal Supplement Series, Volume 231, Issue 1, article id. 8, 21 pp. (2017)

2.T. Enoto, K. Nakazawa, K. Makishima, N. Rea, K. Hurley, S.

Shibata, “Broadband Study with Suzaku of the Magnetar Class”, Astrophysical Journal Letters, Institute of Physics, vol. 722(2) L162-167 (2010)

3.T. Enoto, J. K. Black, T. Kitaguchi, J. E. Hill, A. Hayato, H. Marlowe, K.

Kaneko, Y. Takeuchi, A. Yoshikawa, S. Griffiths, K. Jahoda, P. Kaaret, T. Tamagawa and S. Khalid,

参照

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